「ZRX1200R」の進化の形を想定してまとめられた好例
Zやカタナ、CB-FにNinjaといった’70〜’80年代モデルの現代化を軸としたACサンクチュアリーのコンプリートカスタム、RCM(Radical Construction Manufacture)。このRCM-569のようにZRX1200Rをベースにする場合もある。比較的新しく、ディメンションは現代17インチのそれだ。
ACサンクチュアリー・中村さんは「ZRX1200RやDAEG、Z900RS、ざっくり2000年代の現代水冷車と言いますけど、これらは走行距離が少なければ“RCM Ninja スポーツパッケージType-R”的な構成が使えるんです」と答えてくれた。Ninjaスポーツパッケージとは、GPZ900RをRCM化する際の基本メニューで、前後17インチ化や各部の上質化が基本だ。大筋ができた2000年頃、GPZ900Rは現役モデル。それに対してのコンプリート化ということで、走行距離が少ないものならエンジンは状態確認を行った上でそのまま使えた。そのパッケージに近いということだ。
![画像1: 「ZRX1200R」の進化の形を想定してまとめられた好例](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2025/01/20/91a7c548f7e095f78e9b076afc6ffed780dd6bc0.jpg)
「Ninjaスポーツパッケージでは、今ではエンジンに手を入れることを必須メニューに加えましたが、ZRXでもエンジンオーバーホールやチューニングへのリクエストが増えているんです。この車両はその例と言っていいでしょう。
例えばクランクはZなどの組み立て式と異なる一体鍛造品ですが、ダイナミックバランス(動的平衡)を取ることで並列4気筒に多い振動が抑えられ、スムーズさが増します。当社では内燃機加工部門のDiNx(ディンクス)が担当していますが、スタティック(静的)でなくダイナミックでやるのが効きます。スープアップという面では、めっきシリンダーなので排気量はそのままで高圧縮化する。パンチも上がりますが、これは遊び心という部分も含みます。もちろんヘッドまわりの密閉性アップ、バルブガイド打ち替えやバルブシートカットも行います。加えてDAEG用ミッションで純正の5速を6速化する。こうしたメニューをオーバーホール、つまりエンジン全分解と合わせて行うことも増えています」
ZRX1200Rで20年前後、DAEGでも8〜15年の車歴を重ねるようになったから、エンジンオーバーホールを行って性能を回復、いや、プラスアルファ状態にしたいということだ。対するシャシー側はどうだろうか。
「基本が17インチ適合のシャシーですから、Zなどの旧車のように、今のタイヤに合わせた剛性向上やフロントフォークを大径化した時にヘッドパイプのベアリング容量を大きくしてやって、その上で各部マッチングを考えるというような作業は要りません。レースでタイムを詰めるというような場合を除けば、カスタム屋さんにとっても難しさは少ない素材とも言えます。ストリートでならまずそのままの数値で行ける。それでも、よりしっかり走るようなチェックと仕立て直し、あと各部のアップデートは行いたい。
簡単に言えば手直しでなくて、正しく組み直しをしてやる。旧車に対しての切った張ったというような大きな加工は、ZRXではほぼない。その分、基本に忠実な作業を行う。前述したようなフロントフォークやヘッドパイプなど各部のサイズは元から17インチに合わせてありますから、それが当然ですけどきちんと動いて性能を発揮できるように仕立てるわけです」
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普通にも思えるが、量産車そのままの状態から作動や機能の質を上げて、一定の基準を超えるようにする。それで17インチディメンションも各部の性能もより高まる。そんな、RCMで行われている定量化の手法がZRXにも通用しているということになる。加えてこの車両では先行したRCM-528(ZRX1200R)をモチーフにし、フロントカウルをDAEG用、シートもシングル化するなどで外観も進化させた。
ここは中村さんいわく、ZRXがDAEGになるのでなく、キャブレター仕様のZRX1200Rのまま進化した姿を想定したと。そう、ZRX1200Rの進化の形、可能性を見せる発想、そうしてまとめられた現代車カスタムの好例と言っていいだろう。
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Detailed Description 詳細説明
![画像1: Detailed Description 詳細説明](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2025/01/20/a5b723422eb0207c41e677b6703ce1ba4ef9eb07.jpg)
ビキニカウルをDAEG用とし、その中に収まるメーターはパネルを変更、ヨシムラ・プログレス2メーターやprotecシフトインジケーターを追加。スクリーンとNK-1ミラー・タイプⅡヘッドはマジカルレーシング。ステムはスカルプチャー倒立ステムキットSP TYPE-1(オフセットは純正28mmに対して30mmに)で左右マスターはブレンボ・ラジアルで、レバーはZETA RCMコンセプトだ。
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ライムグリーンにブラック、ホワイト、ゴールドをミックスしてZRX1200R進化型をイメージさせるように配色された外装はYFデザインでフルペイント。
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シート/シートカウルはレオパルド製ZRX1100、1200シングルシート(LEO)にオリジナル加工を加えている。
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キャブレターはTMR-MJNφ38mmのデュアルスタックファンネル仕様。1段目ファンネルとドレンボルトはゴールド、2段目ファンネルはブラックを選択してボディカラーとも連携させてある。
![画像5: Detailed Description 詳細説明](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2025/01/20/bd90993ef491978f830351e98dda134d1847bbe5.jpg)
フレームはシートレール部を一部加工しパウダーコート仕上げ。エンジンはZZR1200純正ピストンを使って1164ccのままに高圧縮化、カムをヨシムラST-1にしFDC材バルブガイド打ち替えやバルブシートカット加工を行う。クランクはダイナミックバランスを施しミッションはDAEG用6速に換装。ワイドラジエーターKIT/OILクーラーHIGHマウントKITの冷却系はナイトロレーシング。
![画像6: Detailed Description 詳細説明](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2025/01/20/2de288e6804d1bf9d41d626a0f5e3ae89146b10c.jpg)
クラッチレリーズプレートKITとバックステップKITはナイトロレーシングでドライブチェーンはEK530RCM(BK;GP)を使う。
![画像7: Detailed Description 詳細説明](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2025/01/20/a46e45bfbaf6c5f2ef09b972dfce362f0b176f32.jpg)
ノーブレスト・倒立E×Mパッケージでオーリンズ2IFF5200倒立フォークをセット。フロントブレーキはブレンボGP4-RXキャリパー+サンスター・ワークスエキスパンドディスクφ320の組み合わせだ。
![画像8: Detailed Description 詳細説明](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2025/01/20/4ce929a28ccb5cc91129f1bf6799a34f4788aac7.jpg)
リヤブレーキはブレンボGP2-SS・CNCリアキャリパー+サンスター・ワークスエキスパンドディスクφ250。排気系はナイトロレーシング4in1“ウェルド”クラフトチタン 3D EXマフラー+同ヴァリアント チタン サイレンサー ヒートポリッシュ。
![画像9: Detailed Description 詳細説明](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2025/01/20/6b2c546498daa3b97d83c20b6a524b0839dca054.jpg)
リヤサスはオーリンズ・グランド・ツイン(KA416)+スカルプチャーR.C.M専用ワイドスイングアーム+ブロックスタビ、ホイールはアルミ鍛造のO・ZレーシングGASS RS-Aで3.50-17/6.00-17サイズを履く。