注目すべき新興サスYSSが大活躍中だ!
タイのYSSは1983年に誕生。アジアを中心に多数のバイクメーカーにサスペンションを供給する、新進のサスペンションの専門メーカーだ。そして、古くはカワサキZシリーズ、最近ではゼファーやZRXシリーズ、最新のZ900RS用まで、リプレイス&カスタムパーツを供給するサプライヤー、PMCがそのYSS製品の取り扱いをスタートしたのが、2008年のことだった。
PMCは日本発売初年度から積極的に、国内モータースポーツシーンに製品を投下。もて耐や地方選手権を皮切りに、今や国内最大のサンデーレースイベントとして知られるテイスト・オブ・ツクバでも多くのユーザーを抱えるまでに成長。国内ロードレース選手権では、JP250インタークラスで笠井悠太選手(CBR250RR)が、2020年シリーズチャンピオンに輝いた。笠井選手は2018年シーズン最終戦からYSSにスイッチ。その’18年から’19、’20年の3年連続でJP250インタークラスを連覇した。
そして今回話題とする、SPA直入でのエンデュランスフェスタ5時間耐久レースでの活躍。カワサキのレジェンド、清原明彦、塚本昭一両ライダーを含む豪華布陣で臨む、Vamos with PSK&YSS・A-TECH RacingのNinja ZX-25Rにも、発売間もないYSSのリヤショックとフロントフォークカートリッジは採用された。そして注目の集まる中、見事、同チームによるZX-25Rでの公式レース初優勝を支えてみせたのだ。
「今回、チームが使った製品は、フロントフォークカートリッジこそスプリングレートを変更しましたが、MU456リヤショックは現場でリセッティングしただけです。どちらも市販品、どなたにも普通にご購入いただけます」(PMC・正本晃二代表)
1周、約1.43kmのレーシングコースを337周(約500㎞弱)、5時間にわたり手練れのレーシングライダーたちが全開走行で走り抜ける……。過酷なレースシーンをものともしない、YSSの性能と耐久性を改めて実証した形だ。
▲エンデュランスフェスタでの、井吉亜衣稀(いよし あいき)選手の走り。井吉選手は2020年、アジアロードレース選手権(ARRC)のAP250を走る予定だったが、コロナ禍の影響で同シリーズは第1戦セパンを終えたところですべて中止に。同シリーズでASB1000にエントリーした岩戸亮介選手ともども、不完全燃焼のシーズンとなった。このエンデュランスフェスタでの優勝を弾みに、2021年シーズン再度の活躍に期待が集まる。
Ninja ZX-25Rの主力市場タイのYSSだからこそすぐにできた! フルアジャスタブルショックとインナーカートリッジ!
▲Ninja ZX-25R用のMU456フルアジャスタブルリヤショック(20万円+税)とフロントフォークカートリッジ(10万円+税)。MU456はプリロード調整を写真のエア式、あるいは油圧式から選択可能。伸び側は30段、圧側は低/高速とも各30段の減衰調整可。温度上昇による減衰力変化を抑えるサーモニードル付きで標準スプリングレートは95N/㎜(セットアップ用スプリング2本付属)。また、伸び側減衰力と車高調整機能を搭載したMA456もある。一方のフォークカートリッジは伸び/圧左右独立式で伸び側30段、圧側30段の減衰力調整可能。標準スプリングレートは7.5N/㎜だ。なお、同品装着には専門知識も必要。YSS JAPANでも組み付け対応可能(要・工賃)なほか、同社に問い合わせれば推奨店も紹介してもらえる。
世界を舞台に実戦投入、その性能に磨きをかける
前出の通り、ここに来て日本国内での活躍も目立つYSSのサスペンションだが、海外での戦績に目を向ければ、合点がいく。
例えばWSS300(World Supersport 300)。2017年にスタートしたこのレースに、YSSは18年から参入。同年に製品化したリヤショック・MRシリーズを早速、実践投入した。そして2020年は同社がサポートするMTMモーターポート・カワサキのジェフリー・ブイス選手がNinja400を駆り、シリーズチャンピオンを獲得している(日本人として唯一、同シリーズに参戦中の岡谷雄太選手も同チームに所属。第6戦カタロニアのレース2で日本人初優勝。シーズン10位)。2019年からはダカールラリーにも参入(’21年大会は26位)。遡り2007年、R&Dセンターとしてオランダに設立したYSSヨーロッパを拠点に、着実に戦績を上げ続けている。
レースからストリートまで、スポーツサスの王道で勝負
こうした背景の下、『さらに日本国内でのブランド認知をアップしたい』と目論むのが、先の国内発売元・PMC。モータースポーツシーンへの浸透を足がかりにしたいと考え、昨年、’20年シーズンはその土台作りの年として、全日本ロードレース全ラウンドでブースを設営、サービスを展開した。主にST600/1000に参戦中のプライベートライダーのサポートでスタートしたが、’21年も継続予定。これまでに積み上げたノウハウを基に、さらに細やかなサービスを目指す。目標はJSBクラスへの参入なのだという。
「高性能サスペンションブランドがひしめき、なんといっても実績がモノをいうクラス。挑戦のしがいがあります」(正本さん)
一方、ストリート向けにはモータースポーツ活動でのデータが豊富なNinja ZX-25RやCBR250RR用を中心に製品訴求を図っていく。
「おかげさまで、すでにNinja ZX-25R用の製品は、レース用としてフルアジャスタブルのMU456リヤショック、フロントフォークカートリッジとも、多くのご用命をいただいています。ストリートユースでは、フリーピストン式で伸び側減衰力30段階調整が可能なMA456が、想像以上の注文をいただいてこちらも驚いています。先のMUの20万円+税に比べて、MAは7万円+税。お買い求めやすさもありますが、MAをインストールしてもらうだけでも乗り心地や走りの差は歴然に感じていただけるはずです」(同)
さらに今後は、一挙に車種ラインナップを広げ、好調なオフロードジャンルや、スクーターシリーズへのマーケット拡大、他パーツメーカーとのコラボ製品なども計画しているそうだ。『モータースポーツからストリートシーンまで』。まさにスポーツサスペンションの王道を行く、YSSの製品群。その動向からは今後もしばらく目が離せない。
SPA直入での栄光の“証”は、神戸・カワサキワールドにも展示中だ!
▲神戸にあるカワサキワールドは、川崎重工グループの企業ミュージアム。Vamos with PSK&YSS・A-TECHRacingのNinja ZX-25Rとトロフィーは歴代名車やレーサーとともに、館内のモーターサイクルギャラリーに展示中(2021年2月2日現在)。その優勝の意義はカワサキ内でも認められたということにほかならない。
▲集合写真は左から、JP250を走る後藤恵治選手、井吉亜衣稀選手、清原明彦選手、塚本昭一選手の両レジェンド、岩戸亮介選手。豪華メンバーはコースでもパドックでも注目の的。NEO STANDARDクラス(115cc〜400㏄以下の4スト車。車両指定あり。4気筒車はNinja ZX-25Rのみ参加可能だった)を走り、最後は清原選手のライドでのゴールで華を添えた。車両に目を移せばYSSの足まわりほか、A-TECH製レース用外装(ヘッドライトは塗装表現)、ステップまわりをはじめとしたSNIPER製ビレットパーツ&ガード類、マフラーはヨシムラ・アジアがアジア選手権参戦用にカワサキと協力開発した、レース用のHEPCO FORCE TSSフルエキゾーストをチョイス、装着している。
カワサキ車向けパーツ販売で知られるPMCは今、YSS製品の浸透にも注力中!
▲兵庫・淡路島のPMCといえば、カワサキの人気車向けパーツ販売で古くからカスタムファンに知られるサプライヤー。直近ではZ900RS向けパーツを提案する“ARCHI(アーキ)”ブランドも興すなど、常にカスタムシーンの先頭を走る。最上段写真はお話を伺った、正本晃二代表。PMCにはYSS本社のR&Dを担うスタッフも在籍し、バネレート変更など細かなリクエストに応えてくれる(中写真)。下段写真はZ900RSをベースにPMCの取り扱い製品を装着した最新デモバイク。もちろん、YSSのフルアジャスタブルリヤショック(タンク別体式MS456)とフォークカートリッジが装着されている。ARCHIブランドで新発売された427ショート管マフラー(JMCA認証)も迫力だ。
■取材協力
YSS JAPAN[輸入発売元・ピーエムシー] TEL0799-60-0101
〒656-2131兵庫県淡路市志筑3071 http://www.win-pmc.com
カワサキワールド TEL078-327-5401
〒650-0042兵庫県神戸市中央区波止場町2番2号(神戸海洋博物館内) https://www.khi.co.jp/kawasakiworld/