※本企画は『Heritage&Legends』2024年10月号に掲載された記事を再編集したものです。
カスタムはお任せ路線でのオーダーが増加中
ゼファーシリーズについては良質な中古車両の販売を行い、コンプリートを主としたカスタム車両を製作。また車種の特徴を汲むだけでなく、ひと味を効かせたオリジナルパーツを多数送り出しているバグースモーターサイクル。同店での車両の動きは、そのままゼファーへのニーズや動向につながっていると言える。カスタム車からその様子を見てみよう。
紹介してくれた車両は1100ベースで、バグースでコンプリート製作したものがベースとなっている。全バラにした上でフレームの確認/修正と仕上げを行い、前後にオーリンズサスを備えて鍛造ホイールを履く。さらにブレーキを強化してエンジンはオーバーホール必須として手を入れて積むのが基本だ。
この車両もその基本の手順を踏んでいるが、エンジンはバグースのデータで作られたオメガ鍛造ピストンで1135㏄仕様としてFCRφ37㎜キャブレターをセット。エンジンマウントもバグース強化タイプでオイルラインも同様。
車体側は前述の内容にバグースステムキットでフロント17インチ化を図り、リヤにはプレスフォーミングスイングアームをセットして機能はもちろん、ルックスのバランスも取るといったメニュー。取り回しが軽いのもバグース・ゼファー1100に共通した印象だ。同店・土屋さんに聞いてみよう。
「この車両はコンプリートとして作ったものを買っていただいて乗られているものです。内容はコンプリートメニューを超えたような作り込みで、オプションも多く入っています。このところのゼファーカスタムは、そんな傾向の車両が多いんです。“お任せでお願いします”というような。
その上で1100の場合はノーマル感も出していく感じが多い。750の場合は、当店の850㏄仕様をベースにしながら、がんがん走る傾向のものが多いかな」
もう一台紹介してくれたゼファー750カスタムは、その象徴的な仕様とも言っていい。10年に渡って各部を変更していて、エンジンはその850㏄&ツインプラグヘッド仕様。前後足まわりの強化なども先のコンプリートメニュー同様だから、それをどの方向に持っていくかということ。軽く、捌きの良い750をベースにした小気味よいパッケージは、なるほど支持されるわけだと思わせてくれる。
カスタムについてはそんな傾向。依頼についてのお任せは、カラーリングだけでなく仕様にも及ぶそうだが、それはバグース・ゼファーがある程度の水準に行き着いているから、そこに見たことのない色や仕様を加えてほしいという、かつてのカスタムらしい期待を反映したくなるのかもしれない。
“不幸にならない修理”を理解してもらいたい
そんな傾向のカスタム車とともに、バグースには多くの整備の依頼も入ってくる。ノーマル車も、カスタム車も。ゼファーに対して必要な箇所の整備もパッケージ化した車検バイクドックというメニューもある(車検バイクドックの詳細はこちらの記事をチェック!)。土屋さんは「お客さんには、不幸にならない修理を理解してもらえればもっといいんですけど」と言う。どういうことだろうと聞くと、目からうろこが落ちてくる。
「ノーマル車両のオーナーさんで多いのですが、純正、ノーマルベストという考え。確かにメーカーが多くのテストを重ねて作ったものですし、その意見は間違っていない。でも今は、もう15~30年経った車両になっています。走行距離も伸びているでしょう。
例えばキャブレター。ノーマルで掃除すれば調子が戻るでしょと思う。でも、ゼファーのノーマルキャブ用負圧バルブは純正廃番です。ダイヤフラムもそのまま使えると思えませんし、キャブレターボディ(スライドバルブが入る箇所)も減っているはずです。するといくらジェットを変えても燃料調整はきちんとはできません。
それを使って何とか走れるレベルに直したとしても、またすぐ不調になるのが見えています。それで“あの店に持っていったけどすぐ調子悪くなった”とか“純正で乗っているのに直らない”となる。
それでオーナーさんは何度も直す、出費もかさむ。でも快調ではない。お店もその都度直すけど完調にできない。手間もかかってしまう。新車や純正パーツがあればいいんですが、そうじゃないんです。使えない純正パーツは、掃除しても使えない。純正そのままで飾りたいとかならそれでいいですが、いいものを使う方がいい。リプロパーツも悪い物は減りましたし。
そこは理解していただければと思います。見えないエンジン内部パーツや電気系はさておき、今のキャブレターのように見えるところもその考えで行ってもらった方が、オーナーさんもお店も不幸にならないで済みます。それはもっと知ってもらえるといいですね」
劣化を素直に受け止める。そして社外パーツだからいいなどでなく、状態を良くするために新品を使うのだと理解する。パーツの使い方はプロ(ここではバグース)のノウハウを頼ればいい。それだけの実績も積まれている。
意味があって楽しさも増すパーツ群も続々
そんな純正指向も含めて、できるだけパーツは作っていきたいとも言う土屋さん。現状では特に純正代替品が構想に追いついていないんですけどと言いながらも、今回も新作を見せてくれた。
ジェネレーターをZRX1200DAEG用にコンバートするキットだ。削り出しのボディにDAEG用インナーを組んで発電系を復活。同じくZRX系スイングアームを流用する際に使えるチェーンガードは、付ける元と付ける先が複数あることに応じている。ステムウエスト加工も施した750用1㎜オーバーサイズバルブに独自デザインのオイルクーラーコアガードと、自社での加工も生かしながらラインナップは増加中だ。
このように、ゼファーには細かい点まで目を配るバグース。ただ9月まではいったん作業依頼をストップしている。それは現状を整理してきちんと次のものを受ける準備のため。だから、再開を少し待てば良い。
なおバグース敷地内には、以前から構想していたカフェ(23Cafe)がオープンした。ソーセージもオーダー製というホットドッグや特製のかき氷を楽しみ、店舗で車両を見たりパーツを買ったりするのも、ゼファーが出てきた頃のバイクライフぽい。こうした楽しみを見出すのも、良さそうだ。
快調ゼファーを維持するためのパーツ群の数々
バグースで現在進行中のゼファー750フルカスタム。フレームをゴールド仕上げ、エンジンを850cc仕様(左上はそのヘッド)にすること、同店コンプリートとしての足まわり構成は決まっているが、ほかは今多い“おまかせ”とのこと。土屋さんの既成のものにない独自性を提供してくれることへの期待だろう。左下、850cc化時のツインプラグヘッド化も人気。
東レ・ウルトラスエード(旧名アルカンターラ)を表皮に使い、フロント部に衝撃吸収材T-NETを収めたBagus! アルカンターラシート。同店コンプリート車両でも必須アイテムという。張り替え加工で13万2000円、表皮色2タイプでステッチ色4種。想像されがちな水染みはなく、快適性も高質感も得られる。
純正と同じ開度で重くならないスロットルをFCRキャブレターに組み合わせられる“Bagus!汎用スロットルキット TypeA 巻取Φ32”(1万7380円)。FCRでコントロール性を高くしたい向きにも、純正の交換用にも勧めたいパーツ。ハウジングにはテーパーキャップボルトを使い、質感も高めてくれる。1100/750用。
Bagus! ウエスト加工ビッグバルブゼファー750用(吸/排気系計8本、3万6080円)はINφ35mm/EXφ31mmの各1mmオーバーサイズ。ステムはウエスト加工してバルブ大径化に対して純正同等となるよう軽量化、全長はオーバーホールを重ねた車両に適した0.5mmショート仕様だ。
純正ではサビが目立つことが多いヘルメットホルダー(写真下)を円筒形のスタイリッシュなものとしたヘルメットロック(写真上)も新製品。ロック本体はFIXE DESIGN製でバグースでゼファー用のスマートなマウントを製作して組み合わせている。
オイル切れを起こしにくい上取出し仕様で11インチ16段ラウンドタイプ、補機類もオールブラック仕上げの“Bagus! オイルクーラーキット”(16万2800円)に使える“Bagus! オイルクーラーキット用コアガード TypeA ラウンドコア 11インチ16段用”(1万780円)も登場。ステンレス製ヘアライン仕上げとブラックを設定。
純正スイングアーム用チェーンカバーもすぐ使えるように製品化。写真上はゼファー1100(上側)、750(下側)用でともにブラック、アルミ無垢あり。純正ホイールにも使えてワイドホイールでも干渉なし。写真下はゼファー1100にZRX1200R用スイングアームを使う時用。いずれもこだわりのM6キャップボルトが付属する。
敷地内に“23Cafe”もオープン
バグースの入り口スペースにはかねてから構想のあった“23Cafe”(にーさんカフェ)がオープンした。ホットドッグ各種やドリンク&ポテトのセット、昔風と今風(写真下は“ミルフィーユ”)のかき氷等は夏季に楽しめる。こちら目当てで覗きに行ってみてもいいかも!